お久しぶりのまこちよです。
最近更新がかなり止まってしまっていて申し訳ないの一言に尽きます。。
少し体の調子を崩してしまい、更新まで手がのびず、おまけにかなりの忙しさに手を焼いていて要領の悪いまこちよは更新するまでにかなりの時間を使ってしまいました。
今回の反省を活かし次回からはもう少しテンポ良く更新していけるかなと思っているので、どうかこんなまこちよペースを見守っていただければ嬉しいです。
それでは、お話の続きに参りたいと思います。
準備がよろしければ下へどうぞ!
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丈瑠に連れられことはが目にした屋敷という建物はことはが今まで目にしてきたどれよりも大きく、そんな屋敷の中で待ちかまえていた仲間たちはキツネであっても分かるくらい強烈な者たちばかりだった。
しばらく呆気にとられていたことはは、目の前に差しのべられた手に気づき、慌てて自らの手をあわせて握りはにかみつつも笑顔であいさつをする。
「・・・あ、えっと、はじめまして。うち花織ことはって言います。元は京都の山に住んでました。よろしくお願いします。」
「へえー、お家が山奥なんてちゅっと不便ね。町までかなり出るの大変じゃなかった?」
ことはの手を両手で優しく包み込みながらいたわるような言葉で話してくれる茉子に安心したことはは少し口数が増える。
「はい。でも町から離れてる方がうちらにとってはええんです。なんせ花織家はキツ・・・」
ことはがついキツネだと言いかけそうになったとき、丈瑠が咳払いをして話を遮る。
「ことはの家族である花織家は、山奥で森の間伐やキノコなどの食料の調達しそれを山を降りて販売をするという“キツい”仕事をしている・・・そうだったな?」
丈瑠の突然の言葉に一瞬驚いたことはだったが、少ししてから自分をフォローしてくれたことに気づき自らも便乗するように口を開く。
「そ、そうなんです。毎日山での仕事がたくさんあってうちら花織家は町で暮らさず山奥にお家作って住んでるんですよ!それで毎日仕事がめっちゃ“キツい”なあって・・・!」
丈瑠とことはは、内心ひやひやしながら目の前の茉子と少し後ろの方で話を聞いていた家臣たちの様子をうかがっていると、茉子が突然ことはの頭から足先までを見て真剣な表情でことはの肩に両手を置いて口を開く。
「・・・ことは、あなた・・・・・」
「は、はい。なんですか?」
茉子の真剣な声や、逃がさないと言わんばかりの眼差しにことはは思わず息を飲み、背中に一筋冷や汗が流れるのを感じたが、なるべく平静をよそおって返答すると茉子がことはの両肩に手を置いて口を開いた。
「・・・・あなた・・・・・・・すっごい汚れてるじゃない!!!早くお風呂入った方がいいわよ!着替えは私のを貸してあげるから!・・・丈瑠、ちょっとこの子借りてくわね。」
ことはの腕をつかみ風のように去っていった茉子に残された丈瑠たちは唖然としていたが、なんとか上手く誤魔化せた安堵感とまたことはが先程ように口を滑らせてしまうのではないかという不安感の両方を胸に抱きながら丈瑠は今日何度目かのため息をついた。
一方ことはは茉子に連れられてお風呂場と呼ばれる場所まで案内してもらっていたのだがある疑問が頭に浮かんでいた。
(・・・おふろっていったいなんやろか?)
キツネであることはには馴染みのないもので、体をきれいにするならば水浴びや毛繕い、香りの良い山草を擦り付けていればすんだ話なのでそれ以上何をするのか検討もつかなかった。
しかし人間にとっては当たり前の行動だということはなんとなく直感的に感じたので隣を歩く茉子にも聞くことができずにいる。すると、徐々に湿気が多くなってきていることに気づいて茉子の方に顔を向けると優しい微笑みを見せてから茉子が口を開く。
「もうお風呂場はすぐそこよ。この屋敷のお風呂はものすごく広いの。お湯の効能や種類も毎日黒子さんたちが変えてくれてるからちょっとした銭湯みたいですごいのよ。」
茉子の話に出てきた黒子という人は、きっと先程自分を担いでこの屋敷まで連れてきてくれた人たちの事だと気づきことはは働き者なんやな、と感心してしまう。
しかしそれと同時にお風呂の入り方がわからないまま、まもなく着くであろう場所にことはは不安を隠せない。
もう観念して不信に思われても茉子に聞くしかないと口を開いたとき風呂敷が突然ひかりだしたので慌てて茉子に見えないように風呂敷を抱え込んだ。
その様子を見た茉子がきょとんとした顔でことはに声をかける。
「ことは?どうしたの急に慌てて・・・何か忘れ物とか?」
「あ、えーっと。その・・あの、なんて言えばええんやろか。うーん。あ、あはははは。」
妙にモジモジとしながら落ち着かない様子のことはの態度に茉子は1つの答えが頭に浮かぶ。
「もしかして、ことは厠に行きたいの?それならそこを右に行けばあるわよ。」
「あ、そうそう!厠!厠に行きたくてしょうがなかったんやわー。ほな、ちょっと行ってきますね。ありがとうございます茉子さん!」
一刻でも早く茉子の元から離れなくてはと駆け足で厠に向かうことはを茉子が少し大きめの声をかける。
「ことは!そしたらあたしはそこのお風呂場の入り口で待ってるわね。それと私と話すときは敬語じゃなくていいわよ。それとさん付けも無しよ!!」
そんな事を言われるとは思っていなかったことはは驚きを隠せない表情で後ろを振り替えると少し照れながらもしっかりと答えた。
「はい!じゃなくて・・・うん!!ありがとう。茉子・・ちゃん!!」
そして最後にペコリとお辞儀をしてまた駆け足をし始めたことはの背中を見ながら微笑んで茉子はつぶやいた。
「茉子、ちゃん・・・か。」
厠と呼ばれる場所に着くとさっそく風呂敷を広げて光を放っていた本のページをめくる。
やがて文字が読める場所を見つけたことははそのまま視線を落とす。
『あなたは今、キツネの姿を見たパートナーとなるべき人間の元に居ることだろうと思います。
今まで試練や約束事を伝えてきていましたが、これから書かれていることはあなたにとって役にたつことを記しておきます・・・ーーー。』
そんな書き出しからはじまり、読み進めていくと人間の基本的な生活の事、人間の女性としてのたしなみ、言葉遣いや礼儀作法など人間として不自然のないように振る舞えるためのことがつらつらと書かれていた。
その中にお風呂の入り方や今、現在居る厠のことも書かれていてことははほっと胸を撫で下ろす。
そしてざっと目を通し終えると最後の一文が目の中に飛び込んでくる。
『・・・ーーこれだけの事を全てこなすのは大変だと思いますが、日々生活をこなしていくにつれて必ず必要になることがあるはずです。
きっとあなたの役にたつことを祈っております。
それでは最後に、ひとつだけ心にとめておいてほしいことがあります。
あなたが出会ったものや人、もちろんそれはこの本もそうですが今その場所に居ることは全ては必然であり、生まれながらにして決まっていた運命なのです。
これからも、あなたはこの本から課される約束に翻弄されていくことになると思いますが
決して逃げずに耐え、迷うことなくあなたらしく正直に進んでいってください。
そうすれば、道は必ず開けていくでしょうーーーー。』
ことはは本を閉じた後、大切に風呂敷に包み込んでそっと目を閉じもう一度、今読んだ最後の一文を繰り返し目を開いて茉子が待っているお風呂場へ向かって足を向けた。
本のおかげでぎこちないながらもなんとか無難に人生初のお風呂を終え、茉子と廊下を歩き火照った体を少し冷ましている。
すると茉子がニコニコしながらことはに話をはじめる。
「私、親元を離れてこのお屋敷に来てからずっと女1人でね。こんな風に一緒にお風呂に入ることなんて想像もしなかったわ。」
「え!?茉子ちゃん女の子1人やったん!?しかもお父さんもお母さんも居らへんなんて・・・そんなん寂しすぎるわあ。」
まるで自分のことのように眉毛をハの字にしたことはに思わず茉子は優しく抱き締める。
驚いた様子で自分を見上げることはの大きな瞳に語りかけるように茉子は口を開く。
「まあ、少し前からここには来る予定だったから丈瑠たちとは何度か顔会わせたりしてたし寂しくはなかったんだけどね。
・・・今はこんな戦国の世の中だから寂しがる余裕もないくらい。
でもことはが来てくれて改めて女の子が居ると嬉しいと思ったわ。
よし!なんかいい気分だしことはにお礼も兼ねて久しぶりに料理でもしようかしら!!」
「わあ!うちめっちゃうれしいわあ。ほんなら茉子ちゃんの料理楽しみにしてるね。」
「そうとなったらさっそく準備してくるわね!じゃあねことは。また後で会いましょう。」
それだけ言って足早に台所へと向かっていった茉子を笑顔で見送った後、ことはの頭の中には戦国の世という言葉と共にそのとき一瞬悲しそうな表情になった茉子が忘れることができず庭に目をやると
屋敷の入り口の方へ馬を全速力で走らせた丈瑠の姿が目に入ってきた。
「・・・・・丈瑠さん?」
間もなく入り口から馬と共に姿を消した丈瑠に小さな不安を覚えことはは胸を抑えながら丈瑠の向かった方角を瞳を揺らしながら見つめていた。
to be continue...